リストラわいふ@ニュージーランド

恥をかきすて、見栄をすて、人生を楽しむことだけにフォーカスしている 【リストラwifeのリストラlife】をNew Zealandから熱くふんわりお届けします

★第1楽章-2★ ニュージーランドで遺言書を書く~大事な命綱をわすれてはならぬ!

 (これまでのあらすじ)

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弁護士を探せ!

朝、10時 

 はなれのランドリーコーナーで洗濯物を干し終わり、かごをぶら下げて歩いていると、

「今日の予定は?」

と、庭掃除をしているショーンが声をかけてきた。

 

「もちろん家さがしだよ。不動産やさんをあちこち回って、オープンホームも数件見てくるつもり。家を決めないと、子どもたちの学校も決められないもん」

 

「そりゃそうだな。で、弁護士はもう決めたのかい?」

 

「はい? べんご・し?」

 
「なんだ、まだ決めてないのかぃ?
家を買うなら、登記するには弁護士かソリシターの仲介が必要なんだよ。
それに、人間生きてるうち何が起こるかわからんだろ? 
特にあんたたちのような移民は、身寄りがない分、専属の弁護士と医者は必須だ。
必要ならば保証人にもなってくれるから。

備えておくに越したことはない。アテはあるのか?」

 

「…………。」

 

「だろうなぁ(笑)どれ、うちの弁護士を紹介してやろう」

 

かくして、移民一家の「To Do List」のトップには、

 「家探し」よりも先に「弁護士さがし」

 と、書き替えられた。

 

   ◇

 

娘2人を連れ、カンタと私は家の広告新聞を抱えたまま、ショーンがアポを取っておいてくれたという弁護士事務所へ向かった。
玄関を通ると正面に、ででんと構えたレセプションがあって、そこにまた、ででんと女性が構えておられる。(やはりデスクワークの女性は大きい……)

 

受付嬢:「誰とのアポですか?」

 

 (だれとって……弁護士さんです……)
「あのー。今朝、友人が電話でアポを取ってくれたんですけど……」

 

受付嬢:「………………ですので、誰と?」

 

「弁護士さんと……(ってゆうとるやん……by カンタ)

 

受付嬢:「………………。」

 

われら、こういう沈黙には笑顔しか手だてがない。

 

受付嬢:「ですから、どの、弁護士を、ご指名、ですか?」

 

とんちんかんな訪問者がまぎれこんで来ちゃったぞ、とでも言いたげに、彼女はもう一度、スローテンポで言い含めるように言った。

 

見れば、女性の後ろの壁に、3人の男性のポートレイトがかかっている。

 

(な~るほど、わかったぞ! 弁護士たちが共同でオフィスを構えているんだな) 
「あぁ。え~っと、ミスター・ジェームス・マッキーをおねがいします」

 

ようやく女性は安堵の表情となり、インタホーンのボタンを押す。

ピポパ。♬

 

すると、長身の青年が、2階から続くらせん階段から下りてきた。

 

 

おぉ。めっちゃかっこいい!

 

手元を見る。

→ 指輪、してない 

→ めっちゃイケメン

→ 弁護士

……モテるだろうなぁ、

(と瞬時に働くこの思考は、女性であれば誰もがしちゃうワルイクセ……)

 

私たちは、彼のオフィスに通された。

 

   ◇

 

ドクターの問診のような会話を5分ほどした後、イケメン弁護士が言った。

 

「なるほど。娘さん2人の家族4人。先週、ニュージーランドに入国したばかりなんですね。そして、ただ今、家を探しておられる、と……。
(イケメン、パソコンに入力しているの図)

ところで、遺書はどうします? 
スタンダードのものならすぐに作れますけど……?」

 

「はっ? い・しょ……遺書ですか?」

 

「遺書です……まだ書いてないでしょ?」

 

「まだ、です……」

 

「お子さんふたり。まだ16才未満ですよね?
………ということはですよ。
もし、この時期にご両親の身に何か不幸があった場合、遺書を書いておかないと、親権が政府にわたってしまいます」

 

「はぁ……というと……?」

  

「娘さんを引き取る大人がいないとみなされ、政府が面倒見ます」

 

「えっ? それって、つまり……孤児?……施設に預けられるってことですか?」

 

「Yes, そういうことです。財産授与もできません。

ですからね。
そうならないために、財産分与と養育権を明記しておくことをおすすめします。
あっ、あなた方の場合は、日本への連絡先を管理できる保証人も必要だな。
日本にご家族や親戚いますよね? 

その人たちに連絡してくれる人、つまり「保証人」がいないと困っちゃうわけですよ。

 保証人を2人立てて遺言書に明記しておきましょう。
1人は私でいいですから、もう一人、保証人を捜してください。
日本語が分かる人がいいですね」

 

なるほど、異国で暮らすと言うことはこういうことか。
子どもを守る、とは、私たち親亡きの備えも含まれるのだ。
そういうことなのね。

 

「もしもの時……」の可能性を不意に突きつけられて、私とカンタはしばし緊張で固まった。金の面では大した財産はないので遺産争いの心配はないが、それでも丸ごと政府に持って行かれるのはいかがなものか。

確かに……たしかに今、私たちは、危険と背中合わせ、ヤバい状況にある。
もし、今、交通事故で私とカンタが死んじゃって娘たちだけが助かったら……、その瞬間から娘たちは路頭に迷うことになる。

誰かがなんとかして日本の両親へ連絡したとしても、すぐに飛んできてくれるわけではない。娘たちに必要なのは、その瞬間から寄り添ってケアしてくれる人なのだ。

まだ、友人と呼べる人も周囲にいない今、親亡きあとに頼れるのは、金と保証人か……。

これを、備えておかないと、私たちは今、死ぬに死ねない状況にいるってことだな。

 

「じゃ、スタンダードの遺書ってヤツを見せてください」

 

イケメン弁護士は、「Sure !」 と言って、引き出しからフォームを取り出した。

 

   ◇ 

 

もう一人の保証人は、われらの唯一の友人夫妻にお願いした。

日本のように手みやげをもってお願いにあがることなく、弁護士事務所からの電話一本でリクエストしたにもかかわらず「いいわよ!」と、承諾してくだすった。

ありがたい。

かくして保証人欄には、イケメン弁護士と夫妻の名前が綴られる。

加えて、カンタと私それぞれの家族構成、住所、連絡方法を特記して、私たちのスタンダード+特記つき遺書の原案が完成した。

 

おぉ……! 人生初の遺言書!

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人生初の遺言書~これでいつ死んでも安心……

してみると、なんだかニュージーランド暮らしがすべて保障されたような安堵感が胸にこみ上げてくるではないか!?

 

これで何があっても安心して死ねる……。

親の責任とは、行き着くところ、そう言ってのけられる備えなのかもしれない。

 

1週間後、遺書が完成したよ、との電話が入り、再び娘たちを連れてオフィスに向かうった。

私の遺書、カンタの遺書が、われらとイケメン弁護士に一部ずつ手渡された。

 

遺書の諸費用130ドルなり。日本円にして約1万円。

 

高いでしょうか? 安いでしょうか? とんと見当がつきません。

 

(第1楽章-3へつづく)